2023年8月
    学ぶ、楽しむ、見つかる、つながる。
    全世代のための遊び場・学び場「はじめのだいいっぽ」
を開設しました。

「はじめのだいいっぽ」は、大人が楽しむ場所であり、楽しむ大人の姿から子供が学び成長する場所です。
身近な大人の仕事、生活、経験、遊びから、子供たちが、多様な社会があること、そして自分には選択肢がたくさんあることを学ぶ。
体験して、知恵を身につけ、自分の心の動きを感じることを通して、幸せになれる自分を作る。
さまざまな人とかかわり、一生学び続け、みずから人生を切り開いていく力を身につける。

いつでもどこでも、自分がより楽しく生きられる道筋を見つけられるような人になりたい。
子供たちにもそういう人に育ってほしい。
そんな願いがこもっている場所です。

興味を持った世界に「だいいっぽ」を踏み出して実際に体験する過程で目標を見つけ、「自分だからこその道」を旅しながら周りと幸せを共有することで、みんなが人生を満喫できれば、素敵な社会になると思いませんか?

昨年、自身の体に癌が見つかりました。
癌ってほんとに突然なんです。昔の漫画やドラマのように、家族が告知を受けて「本人には言わないで(泣)」というシーンはないのです。
一人で病院に行って、ドライに「悪性です。」と言われ、「悪性って何?今、何の話をしてるの?」と頭の中はクエスチョンマークでいっぱい。
自分が深刻な状態なのか、そうでもないのか、わからないまま数か月を過ごすのです。
いろんな選択を迫られ、治療をこなしていきます。
癌のことは早期に子供達には伝えました。
長男は当時まだ保育園児でした。癌なんて言葉、初耳であろうその保育園児が、隣室に駆け込み泣き出したのです。
万が一、私がいなくなっても、子供たちにはたくましく幸せに生きていく力を身につけさせたいと強く感じました。
学力よりも何よりも、生きるための知恵、人とかかわる力、社会に対応できる柔軟性、人生を楽しむ遊び心、そういうことを身に着けてもらいたいのです。

私は、いくつかの仕事を経験してきました。
経済学修士。
なのに、大学時代に加古川市の青年海外派遣生としてブラジルを訪問したことをきっかけに独学でポルトガル語を習得していたことからブラジル航空に就職。
ブラジル航空が日本から撤退したあとは、バーで歌ったり、バーテンダーをしたり、バッグの卸営業をしたりして気ままに生きていましたが、これではいけないと思い、自宅から一番近い税理士事務所に自分を売り込み、就職。
税理士になりました。
そしてITベンチャー企業に転職。システムアドミニストレータの資格を取ったりしました。
次は、たまたま耳にした公務員試験に締め切りぎりぎりに申しこみ、思いがけず公務員に。
公務員と言っても、一般的なイメージとは違う、「公務員ってこんな仕事するんだ~」という類の部署を回り、貴重な面白い経験をしました。
また、ボランティア活動として、高校生の時からまちづくり活動に参加。現在は大久保まちとものメンバーとして活動しています。
国際交流分野では、ホームステイを受け入れたり、学校の通知簿や市長のあいさつ文の翻訳、交流会や外国人住民の生活での通訳などのボランティア活動をしてきました。
自治会活動も積極的に参加して楽しんでいます。大久保駅前7区の区長、そして大久保南小学校区の健康福祉委員を務めています。
2023年から、明石市人権啓発員を務めています。

人生の体験すべてが「幸せになれる自分づくり」の過程です。
体験が多ければ多いほど、人に語れる自分が大きくなります。人と話せるネタが多くなります。人が話すことへの反応が鋭くなります。
つまり、面白い自分ができあがるのです。
そしていろんな世界を知ることで、心の準備ができ、恐れが小さくなり、さらに新しい体験への躊躇が小さくなります。

何をどうやってどこで体験すればいいのか。自分が知らないことを自分一人で探していくのは簡単ではありません。
それなら、周りの人にその人が生きた道を聞けば、いろんな世界について知ることができます。
その中で、自分が興味を持った分野を試し、そこから目標=自分が幸せになれる場所を絞って進んでいけばいい。
自分が知らないことに向かってまず「だいいっぽ」を踏み出して体験してみるための場所が、子供たちに、そして大人たちにもきっと役に立つはず。
そういう思いから、「はじめのだいいっぽ」を開設しました。
嫌いなことを我慢して頑張ったものの、ストレスをためて、幸せを手放すような、努力が報われない自分になってしまわないよう、
「はじめのだいいっぽ」は、
①自分が「好き」と感じられる社会を探す
②そこで仕事をする=その社会で人を助けて貢献し、人を幸せにして感謝される
③貢献に応じて得た報酬で、今度は自分が人に助けてもらい、「幸せ」にしてもらって感謝する
という感謝のサイクルの中で生きるために、身近な人から多様な分野の知識や経験談を聞き、体験できる場所でありたいと思っています。

「体験」という言葉、最近ニュースなどでもよく取り上げられていますが、とても重要なキーワードです。
子供の体験格差について調査した公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンは、調査結果として、体験格差と経済格差について、
a.保護者の子ども時代の体験機会
b.大人になってからの年収や学歴等
c.自身の子どもの体験機会
は、それぞれが関係している可能性を示唆しています。
「a~cの関係性についての仮説として、第一に、子ども時代に多様な体験をしている場合、非認知能力が向上し、それが学歴や年収、社会的地位等に結びついている可能性がある(前述aがbに影響している可能性)。第二に、保護者自身が子ども時代にスポーツや文化芸術、自然等に触れる楽しさを身を持って感じていなかったり、自分にとって重要な経験であったと認識したりしていない場合は、子どもの体験を必要なもの、重要なものと認識せず、その結果として、自身の子どもに多様な体験をさせようと思わないという可能性も考えられる(前述aが、保護者の意識や価値観に影響し、結果としてcに影響している可能性)。(中略)経済的な事情に加え、このような保護者の意識や価値観が、子どもの体験機会の多寡に影響している可能性が考えられる。
これらを踏まえると、「貧困の世代間連鎖」の解消において、低所得家庭の子どもたちに対して学習や生活の支援だけでなく、体験機会の提供についても、光を当てていく必要があると考えられる。」
(CFC子どもの「体験格差」実態調査最終報告書より)

つまり、体験格差をなくすことが、経済格差の解消につながると考えられます。

文部科学省は、グローバル化や少子高齢化が進展する中で「世界に勝てる若者」、「地域を元気にする若者」として活躍できるようにするため、就活システムの見直しや社会人の学び直し支援などの関係施策の実施と併せて、キャリア教育(望ましい職業観・勤労観及び職業に関する知識や技能を身に付けさせるとともに,自己の個性を理解し,主体的に進路を選択する能力・態度を育てる教育)を一層充実させることが必要だとしています。
また、経済産業省は、これまで以上に⻑くなる個⼈の企業・組織・社会との関わりの中で、ライフステージの各段階で活躍し続けるために求められる力「社会⼈基礎⼒」が、⾃らキャリアを切りひらいていく上で必要と位置付け、我が国産業における人材力強化に向けて「人生100年時代の社会人基礎力」の育成を進めています。

これらは、机に向かって教科書を開いて勉強することで実現するものではありません。見て、聞いて、動いて、感じて、考えて、交流して、体全体で力を作り上げていくのです。
子供はもちろん、大人だってずっとずっと新しいことを体験し続け、自分をブラッシュアップし、自分で道を切り開いていくことが必要です。

私は、趣味の音楽も含め、いろいろな活動の中で、たくさんの素敵な人々に出会いました。
「知らない人と話してはいけません」というのは、もったいない気がします。
人とつながることで助けられることがいっぱいあります。
困ったときは人を頼ってもいい。いつかお返しできるときにすればいい。お互い様。
遠慮して一歩引いて一人ずつバラバラより、みんなで遠慮なく一緒にわいわいするほうが楽しい。
「はじめのだいいっぽ」に、世代にかかわらず、ご近所のみなさんがたくさん集まり、日常生活で助けあう環境ができあがれば最高です。

ベビーからシニアまで、みんながいろんな体験をする場であり、交流する場。
ここに集まったみなさんが、自分がやりたいことを実現する場。
あなたの活動や仕事をみんなに伝え、仲間をつくる場所。
とにかく楽しい時間を過ごす場所。

そんな場所を作りたいのです。

嫌がる子供を無理に塾に通わせる必要はない。楽しみながら自然に学べて、勉強は生きていくための知恵なんだということに気づいてもらいたい。
たくさんの人に出会って、いろんな価値観があることを知ってほしい。いろんな世界があることを知って、それぞれの場所で人を傷つけずに自分を楽しめる人になってほしい。
日常生活で自分の好きなこと、得意なことを体感したうえで、仕事を選び、将来の道を決めてほしい。
親が子に教えられることなんて、ほんのわずか。子供に上限を与えてはいけない。世界は無限に広がっている。

子供だけじゃない。自分だってまだまだこれから。どんどん新しいことに挑戦できる。自分の可能性って、自分が思うより大きい。

そんな気持ちをわかってくださるあなたと出会える日を楽しみにお待ちしています。

はじめのだいいっぽ 代表 胡重尚子(こしげなおこ)